◯解説

1.問題の本質は何か

この事例の問題の本質は、部下に対して納得させていないし、納得させるためのアプローチができていないということにある。

上司が部下に対して職場の目標の明確に伝えること、さらに部下に上司の期待を伝えることは必要なことだ。

しかし、この事例では上司の考えや期待を一方的に押し付けているだけである。

これでは部下は納得しないであろう。

部下との間で意見や考え方が異なる場合に、どのようらに納得させるかがマネジメントでは大変重要なテーマである。

人は納得してものごとに取り組む場合と、納得できないまま取り組んだ場合とでは結果・成果は大変違ったものとなる。

納得するとは、「相手の言っていることを理解し、もっともなことだと認めること」である。

マネジメントにおいては、なるほどもっともなことと認めさせ、そして、実際の行動まで結びつけなければならない。

納得させるには比較的容易な場合と困難な場合がある。

比較的、容易に納得させる場合とは、提示された提案や意見が自分とほとんど同じ場合である。

この場合はあまり抵抗無く納得という方向に向く。

しかし、自分の考えをしっかり持っていて、上司と考えが異なる場合には、納得させることが困難である。

2.対応策

このケースのような目標設定の場面での納得を引き出すための大切なポイントは、相手の意見を引き出すことである。

相手の意見を「傾聴」の姿勢でしっかり聴き、言いたいことや考え方などを引き出すことが基本である。

そして、考えや意見のすり合わせを実施することが必要である。

考えや意見のすり合わせとはどのようなことか、すり合わせの基本的なプロセスを考えてよう。

すり合わせには3つの段階がある。

第1はお互いに自分の意見を伝える段階である。

第2は、お互いの意見の違い・相違点を明確化する段階である。

そして、第3が相違点を埋めるために相互に歩み寄る段階となる。

これらの3段階を経て、すり合わせを実施する。

このすり合わせで大切なことは、「積極的な傾聴」の姿勢と「歩み寄り」である。

この2つの視点がなければ、真のすり合わせは実行できないのである。

この事例では、第一段階で、上司からの目標設定に対する期待を部下に伝え、それに対して部下が自らの責任で目標を設定し、上司に提出する。

このとき、上司として大切なことは、部下への期待だけでなく、その期待の背景を含めて伝えることである。

ギャップがある場合は第二段階に入る。

ギャップとは何か、どこ部分がどのようにズレているかを明確化する。

ここでは、なぜギャップがあるのかについて互い意見を出し合うことが必要だ。

とくに、上司は部下から意見を引き出すことが必要である。

そして、何がどこまで合意できて、どこからが合意できないかを明確化するのである。

ギャップが明確になれば、そのギャップを埋めるための意見の修正を考えるのが第三段階である。

ここからは、お互いがアイデアを率直に出し合い、合意を得る努力が必要である。

このようなプロセスを経て納得につながるのである。