1.問題の本質

このような状況に至った直接の原因は滝川係長の香川さんへの対応である。

品質トラブルに対しての思い込みの対応をしたことが2人の関係を悪くしてしまったようだ。

しかし、ここでは谷口課長のマネジメントに関する問題の本質を考えてみよう。

この事例のマネジメントにおける問題の本質は、事実や現状把握の不備である。

品質トラブルは発生させないことが大切だが、発生してしまった場合には、マネジメントの対応力が重要となる。

この場合、重大な品質トラブルを発生させてしまったにもかかわらず、原因追求と責任の明確化が曖昧になっている。

重大トラブルに対しての原因究明や責任の明確化は管理者としての重要な任務である。

しかも、滝川係長が思い込みで香川さんの責任としていた事実を課長が把握しておらず、このことに何も手を打っていないのも大変問題である。

このことが人間関係を悪くし、退職したいという状況まで香川さんを追い込んでしまっているのである。

また、このような状況に追い込まれているにもかかわらず、本人の申し出があるまで気が付かない課長は、日常の管理不足であり、部下の行動把握ができていない点も問題である。

2.対応策

この問題の対応策については、部下を辞めさせないために何をすべきかという視点、さらには、管理者としての日常管理のポイントは何か、という観点から解説することにしよう。

この事例において部下である香川さんを辞めさせないためには、現状の不満解消が絶対に必要である。

上司である滝川係長と部下の香川さんの人間関係を解決しなければならない。

このような人間関係のトラブルでは、このようにすればうまくいく、という決め手はないが、基本はお互いから十分に事実を吸い上げ、お互いの話し合いの場をつくることである。

お互いがギクシャクした原因が滝川係長の思い込みであることが事実であるとすれば、そのことを係長から香川さんに対して素直に謝らせることが必要である。

この状況を解決するための下準備として重要なことは、係長に対して部下の辞めたい理由が“係長の思い込み”であるということを事前に伝え、納得させることである。

そのためには職場で発生した品質トラブルに関する再度の原因究明が必要となるかもしれない。

次に部下の日常管理のポイントを解説しておこう。

特に、留意すべき点は部下の挨拶である。

挨拶の仕方が変化したときは要注意である。

なにか問題を抱えていたり、悩みがあったりするものである。

そのような変化を敏感につかむセンスが管理者には求められる。

もう一つは日常の声かけである。

少なくとも一日に一度は現場に顔を出し、部下に声をかけて欲しいものである。

その時の反応も大切な情報となる。

さらに、作業環境の整理整頓も大切な情報の一つとなる。

いつも整理整頓ができている部下の作業環境に乱れがあると要注意信号である。

なにか不満を抱えていたり、組織に反発などがあると作業環境の乱れとして現われるものである。