◯ 柴田主任のこんなとき

柴田さんは管理部総務グループの主任(31歳)で、今年の新人が部下として配属になった。

新人の戸倉さん(22歳)の先輩にあたる者は総務課にいないため直接自分が指導育成を担当することにした。

管理部には戸倉さんの他に2人の新人が配属されていた。

部下の指導育成にはある程度自信があったが、9歳の年齢差はやや気になるところであった。

最初の1ヶ月目は自分の助手的な仕事を与えながら、2ヶ月目から一人で担当する仕事を少しづつ与えていた。

そのころ部長から次のようなことを言われた。

「管理部に配属された他の2人の新人に比べ、総務グループの戸倉さんはやや仕事の覚えが悪いようだね。

もっとしっかり指導しなけりゃダメじゃないのかね」と自分の指導に問題があると言いたそうであった。

これは自分の指導力を問われると思い、これまでより指導に力を入れることにした。

今までは仕事の空いた時間は自分で復習させたり、自主的に何かテーマを見つけて勉強するように指示していたが、もっと効率的に向上させるための教育計画を立案し、計画にしたがって綿密に実施することにした。

教育計画を作成し、本人を呼んで内容を伝えた。

「どうも管理部に配属された2人に比べ、戸倉さんはやや仕事の覚え方に遅れがあるようなんだ。

遅れを取り戻すために指導教育に私としても、もっと力を入れることにした。

この教育計画に沿ってしっかり頑張ってほしい」

戸倉さんは何か言いたいような素振りをみせたが、とくに質問もなくこの教育計画で指導を進めることにした。

この教育計画に従って指導を開始し、仕事を覚えるスピードは確実に増してきた。

ただ、その分自分に対する相談も増えてきた。

最初のうちは丁寧に答えていたが、あまりにも基本的で自分が新人だったころには十分に判断できるようなことばかりを聞いてくるのである。

自分の業務も大変忙しくなってきたため、少し自分で判断して進めるようにやや突き放すことにした。

教育計画に従って指導を開始した3ヶ月間は柴田主任の与えた仕事や教育指導に対して熱心に取り組んでいた。

しかし、指導を始めて4カ月を過ぎたころから様子が変わってきた。

仕事に対して積極性がなくなってきたり、指導場面においても真剣に聞く姿勢がなくなってきたのである。

周囲のメンバーとの会話もなくなり、休憩時間の雑談にもほとんど参加せず、ひとりで居ることが多くなったのである。

そして、まもなく本人から柴田主任のところに相談があった。

「私は柴田主任の指導にはついていけません。

部署を代えていただけませんでしょうか」というものであった。

突然の申し出に柴田主任は驚いてしまった。

なぜ、このような状況になった直接の原因は見当たらなかった。

ただ、年の差もあり雑談的な会話がほとんどなく、何を考えているのかがよく把握できなかったのは事実であった。

教育や指導にはかなり力を入れたつもりなんだが・・・・。

年齢の離れた部下の指導教育は難しいと考え込むのだった。

このような状況に陥った問題の本質は何か。

この状況を解決するアプローチはどのように対応すべきであろうか。