1.問題の本質

この事例の問題の本質は「人を育てる姿勢」にある。

人の育て方を誤ったため、部下がすっかりやる気を無くしたのである。

まず、問題として指摘できる点は、他の人と比較しながら本人に対して指導をしていることである。

他部署に配属された同期との比較をされ、自分の成長が遅れているという指摘は最もやる気を失わせる言葉である。

人を育てる場合に他の人と比較によって注意を促したり、指導する姿勢はやってはならないことである。

次に、教育計画を説明する場面で、本人の意思を全く聞いていないことも問題である。

戸倉さんは新人であるため、本人の意思は聞く必要がないというスタンスのようだが、そのような考え方は間違いで、新人であっても相手の意思を尊重することが大切だ。

この事例では、何か言いたそうな素振りを見せていた状況もあり、しっかり本人の気持ちを引き出さなくてはならない。

さらに、本人からの相談に対して適切な対応をしていない点も問題だ。

柴田主任は「あまりにも基本的で自分が新人だったころには十分に判断できるようなことばかりを聞いてくるのである」と自分が新人だったころの考え方を押し付けようとしている。

そして、部下を突き放してしまっている。

状況によっては突き放すことで成長につながることも多い。

しかし、この事例では突き放す場面ではないだろう。

このように自分が育ったプロセスや考え方を部下に押し付けている管理職や先輩社員は意外と多いものである。

基本は育つ側にたった指導育成が大切である。

最後に、年齢差の問題である。

確かに、指導する側とされる側の年齢差は難しい問題である。

新人の場合、理想的には2~3歳年上の先輩社員が良いであろう。

しかし、そのような状況にないメンバー構成である場合、この事例のようにかなり年の差がある指導も必要となる。

ここで大切なことは、指導する側が年齢差を必要以上に気にし過ぎないことである。

指導者が気にすると、指導される側も気にしてしまうものである。

2.対応策

ここでの対応策のポイントは、指導者と対象者との十分なコミュニケーションを取ることだと言える。

新人であっても本人の意思を尊重することが必要である。

まずは、教育計画を立案し、説明する段階で対象者本人の意思を十分に確認することが重要である。

また、実際の指導場面においては、対象者の相談に乗るという姿勢が重要である。

いずれにしても、部下の指導育成を通じて本人のやる気を高める動機づけが重要となる。

動機づけにより、本人がその気になることが大切なのである。

そのための指導者のコーチングスキルの向上が求められるであろう。

コーチングスキルとは、①質問のスキル、②傾聴のスキル、③直感のスキル、④自己管理のスキル、⑤確認のスキルの5つである。

コーチンングのスキルを高めることにより、動機づけ実現の効果的な指導力向上が出来る。

コーチングスキルの内容については別の機会に解説したい。