〔第8講 マネジメント塾〕実行されなかった通達
○ 田中部長のこんなとき
営業部の田中部長は、情報管理を強化する基本方針として、営業から技術開発課への開発依頼の情報経路の一本化を考えている。
開発依頼(客先ニーズ、要望事項など)を本社の営業情報管理課に窓口を一本化し、開発の優先順位を検討した開発計画立案につなげていこうと考えていた。
各支店からの開発依頼は、従来から本社の営業情報管理課に上げるというルールはあったものの、どうも徹底されていなかったのである。
支店と開発課の課員が直接連絡をとり合うこともあったし、また、技術開発の担当者が客先訪問のおりに、直接開発依頼を受けることもあった。
そこで、田中部長は、技術開発課の吉本課長および営業情報課の下川課長と打ち合わせを行い、支店からの商談等からの開発依頼の窓口は営業情報管理課一本に絞るよう、改めて通達を出すことにした。
田中部長はこの際各支店長を集めて、伝達することも考えたが「上期予算編成の時期で忙しい」という不満が出るのもまずいと考えて、電子メールによる通達を出すように部下である下川課長に指示した。
電子メールを配信して2カ月後、田中部長は支店からの開発依頼が仙台支店からの1件のみであったことになにか不審に感じるものがあった。
そこで、営業情報課の課員である大滝さんに代表的な支店を調査するよう指示した。
調査した結果からの主な意見は次のようなものだった。
・技術開発課の担当者に直接連絡したほうが確実に伝わる
・文書(電子メールを含め)で連絡するのは面倒である。
かなり文書のフォームが複雑である
・本社の営業情報管理課を通すと話が遅くなる
・文書だけではこちらの意図が十分伝わらない
・本社で調整されると自分の開発依頼が後回しにされる恐れがある
・本社の指示とおり開発依頼を営業情報課に出したが回答が遅い
・支店から直接電話や文書がくると、ついこれまでの習慣から断りきれないことがある。
客先から強く言われると断れない。
現在の状況からすると、営業につながりそうなものは何でも取り組まなければならないという気持ちになる。
いずれにしても本社と支店との関係で交通整理をしてほしい。
以上のような状況で、2カ月前に出した通達は全く機能していなかった。
それぞれの言い分はわからない訳ではないが、それぞれが勝手なことをやってしまったら、会社としての全体最適化につながらないのだ。
どのようにしたら窓口の一本化が実現できるのだろう。
◯設問
この事例の問題の本質と解決策を検討してください。