〔第11講 **解説** 〕仕事を誰に任せるか
<解説>
1.問題の本質 -仕事を分担させる考え方-
仕事を分担させるときの考え方の事例である。
具体的に誰にするかは、さまざまな事情で画一的に決まるものではないが、基本的な考え方は管理者として持っておく必要がある。
原則論として次のような考え方がある。
①経験者に任せる
これまで経験のある部下に任せる方法である。
これは最も安全で確実な方法である。
しかし、経験のある部下から仕事を離せないために、仕事と人が固定化してしまう。
このことは職場のモラール低下や仕事へのマンネリ化を発生させ業務の革新につながってかない。
②組織の序列を優先して任せる
年功や年齢、過去の業績を全く無視することは、職場の人間関係が崩れ、全くチームワークが乱れ仕事の効率を低下させることにつながる。
職場の人間関係やチームワークを重視するならば、序列によって仕事を任せるのが無難である。
しかし、この方法は能力とやる気のある若手を腐らせてしまう恐れがある。
また、仕事の成果という側面からは能力が不足している人に担当させることも発生し問題がある。
③能力・実力で任せる
まさに仕事本位で分担を考える方法である。
現実的にはこの方法で仕事の分担を考えている管理者が多いと思う。
職場の人間関係や仕事上の制約等がなければ、理想に近い方法であろう。
しかし、この方法だけだと能力のある人に仕事が集中するという問題が発生する。
また、職場全体としてのバランスが崩れ、全体としての最適化につながらないことも発生する。
④やりたい希望を持っている人に任せる
その仕事をやりたい人に任せるという方法である。
今の仕事があわなため会社を辞めたいという要求を引き止める場合、強い意志の自己申告が出ている場合、など本人の動機づけが必要な場合に適用されるものである。
しかし、組織全体からすると職場としての成果につながりづらい。
あまり、適用しすぎると組織の運営は難しくなるため、原則的にはあまり活用されない方法であろう。
⑤育成のために任せる
やはり経験が能力向上には欠かせない。
将来の成長を期待して仕事を任せる方法である。
組織の将来を考えると必要な考え方である。
ただし、この考え方だけで仕事の分担を行うと業務の効率の低下や問題対応に追われることも覚悟しなければならない。
2.対応策
この事例の場合は、徳島さんに任せることが良いと考える。
まずは任せるための必要条件として、①ある程度の経験があること、②電子技術の知識があること、を満足しているか否かがポイントである。
彼はサブとしての経験、電子技術の基礎があるということで、最低限の必要条件は満足している。
さらには、今後の育成という視点も重要と考え、徳島さんを担当にするのがよいと考える。
しかしながら、基本的に本人に任せることにしても、後方支援することの態勢づくりも必要だろう。
この場合、相談役的に佐々木主任をサブとして付け、フォローするような態勢で望むとよいだろう。