〔第15講 マネジメント塾〕突然の退職願い
○谷口課長のこんなとき
谷口課長(男性42歳)は製造課の責任者である。
製造課は縫製加工を行うオペレータを20人抱えている。
ある時、部下の香川さん(女性32歳)が、谷口課長のところに相談にきた。
「会社を辞めたいと思います。
」と不機嫌な顔をして、訴えてきた。
「急な話しですね。
辞めたい理由は何ですか」谷口課長は突然の話しでやや戸惑っていた。
「係長の私への対応に我慢できません。
」
「指示の仕方が横柄で、少しでも間違いをした場合、感情的に怒られます。
もちろん、間違いはいけないことですけど、あんなに感情的に言われると・・・・。
」係長の発言や対応について、具体的な不満を述べた。
谷口課長は、香川さんの上司である滝川係長(女性38歳)からも事情を聞くことにした。
滝川係長に対して、香川さんから辞めたいと申し出があったこと、その原因が係長の対応であることを率直に述べた。
それに対して滝川係長は「香川さんは、たびたびミスをします。
その注意をしているだけで、これは上司としての責任を果たしているだけです。
私の対応が気に入らなくて辞めたいのなら勝手にどうぞ、という感じですね。
」とやや開き直った様子であった。
谷口課長は、突然のことで2人に対して、具体的に指示や指導ができなかった。
もう少し客観的な情報が欲しいと、他のメンバーからも情報を聞かなければならないと思った。
何人かの部下にそれとなく2人の関係を聞いてみると次のようなことが分かった。
数ヶ月前、職場でかなり重大な品質トラブルがあった。
その発生原因は曖昧だったが、どうも係長の思い込みで香川さんの責任にしたようなのだ。
それに対して、香川さんは大変不満を持っているようで、その後、二人の関係はギクシャクしているようなのだ。
香川さんは仕事がよくできる人で、滝川係長の言うようなミスの多いタイプではないと思っていた。
もちろん、ミスをすることはあるが、職場では少ない方である。
特に急な休みがなく、大変信頼できる人なのである。
今辞められることは職場にとってかなりの痛手になってしまう。
何とか引き止められないものだろうかと考えこんでしまった。
このような状況に陥った問題の本質は何か。
谷口課長として香川さんを辞めさせないためにどのような対応をすべきか。
いずれも谷口課長の立場で考えてみよう。