〔第16講 **解説** 〕リーダーシップが発揮できない
1.問題の本質
黒田室長がリーダーシップを発揮できず、指示も徹底しない本質的な問題は、上司である部長への影響力のなさである。
黒田室長は部下に指示を出す場合に、部長の言葉を伝えているだけであり、部長のスピーカーとしての役割を果たしているに過ぎず、管理者の役割を果たしていない。
このことが管理者としての部下への影響力を弱くし、指示の徹底もできない状況にあるようだ。
また、部下がペイパーを半分には減らせないという、不満に対して上司である室長が何も対応していない。
管理者である限り、指示を出す以上部下の不満に対してその解消をし、理解・納得させる行動が必要である。
ペイパーを半分にするという策についての具体的な方向を示し、部下が“なるほどそういうやり方であればできそうだ”と考えるところまで指導しなければならない。
ただ、この事例の場合は、室長自身も難しいと感じていたようである。
室長自身も部長の指示に対して納得していないのだ。
自分が納得しないことを部下に納得させることなど所詮無理な話しである。
部下に指示を出す場合には、まず自分自身が指示の内容を理解・納得することが基本である。
2.対応策
リーダーシップとは影響力である。
ここでは影響力の源泉について解説しよう。
<上司と周りへの影響力>
部下への影響力を発揮するには上司と周りへの影響力が重要である。
上司に対して言うべきことを言えるるだけのパワーがなければ部下を動かすことはできない。
また、周りへの影響力も重要である。
自分の職場の仕事の効率を上げたり、仕事を進め易い状況をつくるために、他部署を動かせる影響力があるか否かがポイントとなる。
ただ、あまり自部署のみを考える発想に片寄ってしまうと全体最適化でなく、部分最適化に陥ってしまう恐れがあるので注意を要する。
<本気さを示す>
人を動かすためには“本気さ”が必要である。
本気さがない発言や行動には人を動かす力はない。
本気さとはどのようなところから感じるものであろうか、基本的には表現方法と行動がポイントとなろう。
表現方法で大切なことは自信と熱意である。
自信がなく熱意のない言葉からは本気さは感じられない。
行動のポイントは約束したことを確実に果たすことである。
約束したことをすぐに破るようでは本気さにはつながらない。
<相手の意見をよく聴く>
影響力を発揮するためのポイントとして意見をよく聴く姿勢が重要である。
自分の意見を聴いてくれる人に対して、自分を尊重してくれると感じるものである。
自分を尊重してくれる人の指示や意見は、そのことを実行しようとするものである。
自分を大切にする人を大切にするものだ。