〔第23講 マネジメント塾〕将来に不安をもつ部下
◯宮本課長のこんなとき
宮本課長は開発本部製品企画課の課長である。
最近、部下である中堅クラスの太田さん(28歳)が元気を無くしているように感じられ、仕事にも多少影響が出てきているようなのだ。
本来、大変前向きなタイプで物事には一生懸命に取り組む姿勢が強いだけにやや心配しているところであった。
周りの先輩達にもそれとなく状況を聞いてみたが、とくにこれといって思い当たることはないが、元気を無くしていると感じているのは同じ認識であった。
ただ、一つ年上の北田さんは、「彼はなにか将来に対して迷いがあるのでは・・・」というような話をしていたのである。
宮本課長は直接本人に話を聴くことにした。
丁度、目標管理の中間面談の時期でもあったので、この機会を使って、それとなく話を聴くことにした。
宮本課長は太田さんを呼んで中間面談をはじめた。
目標の中間状況の確認を終えたころ、この件について「目標の達成の進捗状況はやや遅れがあるもののそれほど心配はないのだが、最近の太田君の行動が全般に元気がないように感じるのが、気にかかるんだが、どうかしたのかい」と元気がないように感じることを率直に伝えた。
それに対して、太田さんはしばらく黙ったままだったが「元気がないと感じられたのですか。
別に元気をなくしたわけではないのですが、自分の将来に対してとても不安なんです。
会社の組織は度々変更になるし、私の業務も短期間に何度も変更されています。
これでは自分の技術の蓄積ができきません」と将来の会社や自分の能力開発に不安を抱いているようなのだ。
この件についての話し合いはしばらく続けたが、要するに、会社の組織変更や業務の変更が頻繁で、自分の技術力の蓄積が出来ていないということへの不安があるようなのだ。
確かに、最近の組織変更はひどすぎると宮本課長も感じていた。
組織が硬直化するのも問題だが、あまりにも無節操に変更することも問題がある。
技術や知識の蓄積が体系的に出来なくなり組織力が弱まってしまう。
会社の方針は自分としてはいかんともしがたいところがあるのだが、部下の太田さんについては何とかしなければならないと思った。
このままでは会社を辞めると言い出しかねないと感じたからだ。
一体どのようにすれば、このような状況でも将来に対する不安をなくし、元気に仕事に取り組ませることが出来るのだろう。
自分の立場で、何が出来るのだろうと宮本課長は考えるのだった。
宮本課長の部下管理における本質的な問題は何か。
このような状況を解決するための対応はどのようなアプローチをすべきだろう。